KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

【Book】2017年 日本はこうなる

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが編集した「2017年 日本はこうなる」を読みました。2017年のことばかり書いてあるのかと思ったら、今の経済状況やここ数年の流れが書いてあり、個人的にも新しい発見があった本でした。東洋経済の本が安く売っていたので、それで読んでみた、というのもありますね。

2017年 日本はこうなる

2017年 日本はこうなる

 

 


いくつか、「へーっ」と思うことがありました。

薄型テレビ、携帯電話、デジタルカメラなどの機器の生産指数の動きをみると、リーマン・ショック後の世界需要の落ち込みと円高によって、国内生産からの撤退を余儀なくされ、水準を大きく切り下げている(図表2‐4)。このように、いったん国内生産から撤退した製品は、たとえその後円安になったとしても生産を再開することは容易ではない。すでに生産設備が撤廃されているためである。このため、円安になっても、生産設備の国内回帰の動きは限定的であり、国内生産が復活することは難しい。


円安になっても輸出が増えない理由は、こういうところにもあるんだなーと思いました。

日本の場合、2013年春に黒田日銀による「異次元金融緩和」が始まって以来3年半が過ぎたが、2%のインフレ目標を達成できなかった。しかし、それは日銀の責任ではない。


この本では明確に「日銀の責任ではない。」と書いてありました。私もそう思います。日経新聞を読んでいると、どこかに落としどころをつけないといけないのでインフレ2%の話と黒田さんが対になって出てきます。でも、日銀だけの責任でもないよなぁと日頃から思っていました。この本が明確に書いてくれたので、何かほっとした気分です。

実は観光・レジャー目的で日本を訪れる外国人の半数以上がリピーターである。同じく日本政府観光局による調査によれば、15年度の訪日客のうち、初めて日本を訪れたのは46・4%であった


これは台湾人の8割くらいがリピーターだそうです。そんなに台湾の人は日本に何回も来てくれるのかと感動しました。僕は台湾に行ったことがないので、お礼にそのうち行ってみようと思います。

教育機関や地方公共団体、企業や財団等による奨学金が多数存在する中、奨学金の返済延滞が深刻化している。最も利用者の多い日本学生支援機構の2016年度の奨学金利用者は、約132万人、大学生の2・6人に1人が利用しているが、同機構の奨学金利用者のうち3カ月以上の延滞者は、約17万人(14年末)に上り、自己破産する事例もある。


この本では上のようなことも扱っています。広範囲です。日本人は大学の学費を親が払ってくれるという素晴らしいシステムがあるため、まだ多くはないですが、奨学金が払えず困っている人もいるようです。アメリカではさらにこの傾向が強いようですね。

米国でも大学を卒業するかどうかで生涯賃金に大きな差が出る。したがって、学生は多額の学生ローンを組んでまで大学に通うことを選択する。FRB連邦準備制度理事会)によると、15年末の学生ローンの残高は1・3兆ドルと、自動車ローン(1・1兆ドル)やクレジットカードローン(0・9兆ドル)を超える規模に達した。その重みに耐えきれずに破産する若者も少なくない。


アメリカは、自動車ローンよりも学生ローンの方が多い、と。

所得や富の格差がある程度拡大すると、平均消費性向が低下し需要不足が生じる(いわゆる「長期停滞論」)。逆に、中間層が分厚くなると、平均消費性向が上がり、需要が活発になることは昔からよく知られた事実であるが、最近は格差拡大による需要不足の傾向がさらに明確になってきているように見える。


政府が中間層を増やしたい、所得格差を減らしたいと考える理由はこの辺にもありそうですね。分厚い中間層が増えると消費も上向き、マクロ的にも経済は拡大しそうです。また、幸福度も上がるでしょうね。

気になるEUとイギリスのことなどにも触れており、一つ一つの項目はそれほど多くないですが、扱っている範囲が広いです。糖質制限がそんなに流行っているのかとも感じました。悪くはない本だと思います。